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沼田敬二の徒然日記

千歳メセナ協会はなにを目指しているか。②

千歳メセナ協会はなにを目指しているかについて、前のブログでもご紹介しましたが、今回はその続編です。本題に入る前に、まず、定款第3条目的をご紹介します。「この法人は、千歳市及び千歳市周辺の市民に対して、市民がアートを育て、振興していくという理念のもと、市民メセナ活動と芸術家との連携をコーディネートすることなどによって、芸術文化振興に関する事業を行い、地域に根差した芸術文化を創造発信し、市民が芸術文化を享受する地域文化の増進に寄与することを目的とする。」

以前には、「メセナ」の意味、そして、市民が芸術文化を振興していくという理念についてご説明しました。ここでは、「双方向性」と「居場所づくり」(「文化による社会包摂」を含む。)というキーワードを通して、ご説明します。

芸術文化による街づくりは、1980年代に第1次ブームといっていい状況があり、各地で特色のある取組がなされていましたが、下火になりました。その後、バブルの頃、企業メセナが盛んになり、それも下火となって現在に至ります。この頃のトピック的なことで重要なことは、ココロの豊かさを重要視する国民の割合がモノの豊かさを重要視する方々を越えたことでした。この部分は、以前書いていたブログにありますのでよろしければご参照ください。つまり、日本が豊かな社会となったことから、人々の価値観が多様化し、幸せを感じる基準も多様化してきたと言えます。そして、この頃芸術文化振興を進めていた市町村では、豊かな時代の幸せを感じられる1つの方策として有効であるという確信に裏打ちされていたといえます。

今、芸術文化振興を千歳市で実施するかというと、上記の確信を私も共有しているからといえます。還元すれば、芸術文化が「楽しい」が基本であり、多くの方々が音楽や美術、演劇など様々な芸術文化に触れ、自分の好きな芸術文化に出合い、それぞれの人生がより豊かなものとなって欲しいと思うからです。そして、この「楽しい」をより感じられるのは、市民が芸術文化を享受すると同時に、自らが芸術文化の「送り手」となること、つまり「双方向性」にあるといえます。

当協会は、その「双方向性」を実現しやすい芸術文化は演劇文化であると考えています。市民による演劇(コミュニティアート)の取組は道内各地で盛んになってきており、その実施市町村では多くの市民が参加している状況があります。私も様々な方からお話しを伺いましたが、皆さん生活の一部として楽しみに行っていました。千歳市では、残念ながら演劇文化が音楽文化ほど盛んではなく、一朝一夕では根付かないと考えています。そこで、千歳市という国際空港を持つ市民として、世界で活躍できるコミュ二ケーション能力が身に付くと同時に、演劇文化の土壌づくりとなる表現教育を実施し、市民劇や市民ミュージカルにつなげていくという手法をとります。今年は、表現教育実施元年として、様々気運づくりを進めて行きます。

一方、この演劇は、同時に市民に新たなコミュニティーを提供します。そして、この新しいコミュニティーに新たな「居場所」ができることとなります。このことは、少々難解ですが、「文化による社会包摂」という考え方も含みます。これは、「排除の論理(exclusion)ではなく、人々を社会に包摂(inclusion)することによって結果的に共同体のリスクとコストを低減していく」(平田オリザ)というものです。一例として、浦河町では町民ミュージカルが実施された後、国民健康保険の予算がかなり減少したことが挙げられます。また、こうした居場所は、同時に当人の「新しい」居場所であり、芸術文化の基本である「楽しい」をより感じられる場所にもなります。

当協会は、様々な芸術文化を市民の方々に提供し、自分自身にとって好きな芸術文化に出合ってもらうことのお手伝いやきっかけづくりをすること、そして、「双方向性」と「居場所づくり」をキーワードとして、千歳市の文化振興を進めていきます。

 

 

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